映画『ごはん』を観た

私はごはんが好きだ。白米のもちもちとした食感、噛むほどにほんのり甘い味わい。

家には炊飯器がないので圧力鍋で炊いているのだけど、もちもち食感がぐんと増すのでおすすめです!(ただし、テフロン加工済の鍋でないと炊飯後の洗い物がやや面倒なのが玉にキズ。ちなみに毎回重曹入りの水で煮沸してから洗っている)

それはそうと、『ごはん』。そのものズバリ、米作りをテーマとした映画だ。

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 低予算ながら4年かけて撮ったという、京都の田んぼの風景には全く嫌みがなかった。ただ田んぼの広がる光景ではない、背景に高速道路のジャンクションのある画。環境音として、そこを走るクルマのエンジン音も入ってくる。そこを、虫の目、時には鳥の目でもって切り取っていく。米作りのいろはを語る前半部分は、元芸人という役者さんのどこかたどたどしい説明的台詞もあいまって、米作り教育ビデオのような風合いだ。

そんな田んぼの風景のど真ん中に、異質の存在として放り込まれるヒロインのヒカリ。真夏のさなかでも決して被らない帽子や、汗は流れても乱れることのない美しい黒髪、少なくとも5年以上は東京でOLやっていたはずなのに大学生のようなあどけない服装などは物語の流れに沿って変化するかと思いきや、それほど変化がみられなかったのがやや肩透かしに感じた。最後まで中年男性の理想を投影して描かれているのが、イメージビデオっぽさを拭いきれない原因かもしれない…

 それはそうと、この物語を縦糸として貫いているのは亡き父とヒカリの関係性だ。父親役の井上肇さんてとてもいい役者さんですね!画面に出ているだけで、一気に映画らしい深みが増す。ヒカリは父親が亡くなってから帰郷しているので、最期を看取ってもいなければ、上京以来ろくに家にも帰らずほとんど交流は断絶していた状態なのである。米作りを通してヒカリが父の思いを知ったとしても、父ちゃんが一人で死んでいったことには変わりないよ… などと思って見ていたら、最後に奇跡が起こる。おそらくお米の神様の起こしてくれた奇跡なんでしょうね!米作りに没頭しながらもヒカリのことを大事に見守ってきた不器用な父の生前が走馬灯のように流れた後に見せられた奇跡の前に、私は泣くしかなかった。

 他にも“日本一の斬られ役”福本清三さんも出てらして、いるだけで画面に風格がただよう別格の人だった。この映画では斬られはしないけれど、ただ縁側に座って何気ない会話をしているだけでも古き良き日本映画のような味わいが醸し出される。日本映画界の至宝とよばれる所以が分かった気がしました。

いろいろ書いたけど、私が若い女の子に感情移入できなくて、やもめ暮らしの父ちゃんに肩入れして観てしまっただけかもしれない。『ごはん』いい映画だったので、次回作にも期待したいです。