噂のチートラ(125話まで)

ツイッターで話題になっていた「チーズインザトラップ」(通称チートラ)。

フォローしてる人が推してたので軽い気持ちで読み始めたところ、これがとんだ罠で、寝る前のお楽しみのつもりだったのが気がついたら夜が明けていた。8時間ぶっ通しで読んでいた。いまの私に徹夜する体力と集中力が残っていたこと自体もおどろきだが、げに恐ろしきは8時間かけて読んでもまだ物語の半分までしか到達できていないこと…!125話/259話。二徹せねばならないのかい?という恐怖と、今まで読んだのの2倍読めるんだ!という喜びと。それくらい面白い、読むのを止められない。

 

話自体は、特に斬新なわけではない。嫌いあっていた男女がやがて惹かれあう少女漫画の王道をなぞってるし、みんなの憧れの王子様が何故か一風変わり者の私を好きになってくれる筋書きも王道。

けれどこのマンガの凄さは心理描写の巧みさ。私からみる第三者の見え方、第三者から見る私の見え方を多面的に切り取っている。この視点からはこうみえるけれど本当のところはどうなのだろう、という部分を読者に考えさせる。一気には開示しないやり方がサスペンス的で、緊張感を誘う。

特に、「風変わりな私を好きになってくれるパーフェクトな王子様」の内面描写が面白い。キラキラ王子様が実は腹黒だとか、主人公に非常に強い独占欲や執着を見せるというのは少女漫画では萌えるギャップとして描かれがちだが、本作ではむしろスリラー調に描かれる。「主人公を想って」「愛しているが故」の素敵な彼氏の問題行動は、愛の証として美化されることは決して無い。主人公は、そんな問題彼氏の恐怖と胸キュンと疑惑のあいだで揺れ動く。

 

125話の時点では、この問題彼氏(青田先輩)はじょじょに主人公・雪につよい執着を見せはじめている。彼は、明らかに人の痛みを理解できないサイコパス気質で、だれにも興味をもてずにいたが、自分に似たものを感じ取った雪に興味をしめす。はじめ違和感と嫌悪感でしかなかったその「興味」は、やがて好奇心へ、そしていつしかそれ以上のものへ育ってゆく。でもそれが「恋愛感情」なのかは、読んでいて絶妙に判断しづらいところだ。

私には、彼、青田先輩は、雪への所有欲と独占欲で動いているようにみえるのだ。

お気に入りのおもちゃを壊されてプッツンした幼少期の青田先輩のイメージがどうしても拭えない。雪は、お気に入りの「自分の物」。だから、だれかに触れられたり怪我されたり壊されたりしたくない。そうした者たちは絶対にゆるさない。そんなふうに見える。

雪はもちろん、そんな青田に反発する。自分の話を聞いてほしいと主張する。自分の人格をきちんと尊重してほしい、と。

けれど他人の気持ちを感情的に理解することができない青田にとって、他人の人格を尊重することができるだろうか?心から相手を想って動くことができるんだろうか?果たして雪のあたえる影響で青田はそこまで変われるのだろうか……

 

そんなことを気にしつつ残り半分を読みたい。

個人的には今のところ当て馬的ポジにいる亮君も気になるのだけど、仮に雪が彼を選んだとすると血の海になる未来しか見えないからなぁ。難しいだろうなぁ。